芸術祭・後編(刺繍)

さて、英語の手紙事件でノックアウトされた父、気を取り直して家庭科コーナーへ。

そこには色とりどりの布、賑やかな模様の数々。

「へぇ〜、今どきの宿題って、こんなの作るんだ!」と感心しながら眺める。

で、あった。Bの作品。

これは確かに、夜な夜なチクチクやっていたのを見た👀

つまり、これは本人作。母の代筆案件ではない。

愚息ながら、なかなかの出来栄えだ。

筆者はというと、学生時代、宿題をまともにやった記憶ゼロ。

夏休みの最終日なんて、工作も作文も全部テキトーにこしらえた派。

だから、この刺繍を見て、なぜか胸が熱くなる。

わらうことなかれ🫵これは“魂の叫び”である。

きっとこの子も、始業式の朝に、

「ヤベッ!やってねぇ!」と焦りながら10分で縫ったに違いない。

——その“めんどくさい気持ち”、よくわかる。

この1本の刺繍にこそ、少年のリアルな感情が詰まっているのだ。

芸術とは、心を動かすもの。

そういう意味で、この刺繍、作品賞・父心部門・最優秀賞。

そう心で拍手しながら、父は静かに校舎を後にした。