「こんにちは、ヤクルトです。ご利用いかがでしょうか」

うちの事務所の“お得意様”はI次長。ただ、この次長というお方、出張と休暇を生きがいにしている節がありまして、なかなか定位置にいらっしゃらない。
ヤクルトレディはしばらく廊下でケータイを眺め、結局、次長が姿を現さないと、しょんぼりと踵を返すのです。その背中が「またご利用ください…」と小さくつぶやいているようで、毎度胸がギュウギュウに締め付けられる思いがします。
何しろ、ヤクルトは販売員さんが自腹で買い上げてから売るらしいじゃないですか。そんな事情を知ってしまうと、「例のストレスの緩和になると噂のヤツを一本ください」とお義理で買ってあげたくなるわけです。きっと、あのヤクルトレディも満面の笑みで「ありがとうございますぅ」なんて言ってくれるんだろうなと妄想・・・。これ、いつも未遂で終わるんですケドね。
それにしても最近はネット注文やら定期配送やら、便利な仕組みがいくらでもあるのに、昭和の頃からほとんど進化しないこの販売スタイル。
毎日のように繰り広げられるこの小さなドラマを目撃するたび、私の心はそっと悶々の種を蓄積していくのです。
